USPTOのSquires長官によるSMEDに関するメモランダム(通達):
2026年9月29日
2026年9月29日、USPTO長官Squires氏による特許適格性を主張する宣言書(SMED)に関するメモランダム(審査官宛て)が公開された。[注:SMED: Subject Matter Eligibility Declarationの略:即ち、Rule 132に基づく特許適格性宣言書]
そもそも101条の適格性判断基準に関しては2012年から2014年に掛けて最高裁が関与し、Mayo最高裁判決およびAlice最高裁判決において101条の適格性を満たすにはinventive conceptの存在が必要であると判示した。これら判決以降、下級審(地裁、CAFC)及びUSPTOの審査においても、特にソフトウェア関連発明の審査において、混乱が生じた。この混乱を少しでも緩和するために2019年に当時のIancu長官がUSPTOとしての適格性判断基準を発表した。Iancu氏のお蔭で審査における101条適格性の判断はある程度は落ち着いた。とは言え、最高裁が判示した判断基準の根っこの部分、即ち、inventive concept、は完全にクリアにはならないまま審査及び訴訟が係属した。101条を争点とする訴訟においては数多くの裁量上告がなされたが今日まで全て不受理とされた。
従って、101条の適格性判断基準に対して司法での明確化は殆ど不可能というのが現実であり、それゆえ立法府による法改正が唯一の手段であるというのが実務家の共通認識であり、4年くらい前から毎年101条の改正法案が上院と下院において議論されている。実は9/29の公聴会においてSquires長官は主たる証言者であり、残念ながら101条の法改正に費やす時間が限られておりUSPTOとしては法改正に対する立ち位置は不明確なまま議事が進行してしまった。
今回のSMEDに関する通達は2019年のIancu氏によるUSPTOとしての適格性判断基準をより明確化するものではなく、言うなれば「長官としてやっている感」をだしている程度にみえる。
とは言え、今回の通達の内容の要部をまとめると共に違和感を覚える箇所を以下に指摘しておく。
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長官による通達 Section I:
昨年のSquires長官による101条適格性判断への取り組みを紹介。特に、Ex Parte Guillaume Desjardins et al. (2025年9月)において上訴審判パネルで審決(適格性を満たさない)を破棄し、本発明は、継続学習システムにおける『破滅的忘却(catastrophic forgetting)』という技術的問題に直接的に対処しており、機械学習モデル自体の機能的向上を実現する「技術的改良」に該当すると判示した。
長官による通達 Section II:
本通達は本年4月のSMEDメモの内容を変えるものではない。
長官による通達 Section III :“Flowchart to Analyze SMEDs”
今回のフローチャートは、37 CFR 1.132に基づく宣言書・宣誓供述書についての既存のMPEP 716および2106.07のガイダンスを図式化したものであって、新たなUSPTOの実務・手続を導入するものではない。個々の判断事項については、フローチャート記載のMPEP各節を参照
フローチャートは二段階:
Part 1 は、SMEDについて提出時期、宣言文、署名等の形式的要件(formal compliance)を審査する。
Part 2 は、Part 1の形式要件を満たしたSMEDについて、実体面(on the merits)から証拠を評価する。
さらに、各Technology Centerには、SMEDおよび特許適格性について審査官を支援するSubject Matter Expertsが置かれている。ただし、最終的な特許適格性の判断権限はPrimary Examinerにある。

つまりSection IIIのポイントを一言で表せば、
「SMEDを単に“専門家の意見書”として扱うのではなく、客観的証拠→クレームとの関連性→後出しによる開示補充になっていないか→証明力の衡量→記録全体に基づく適格性判断、という証拠評価のプロセスに組み込む」と理解できる。
Section IV: SMEDの作成・提出に対する最善の方法 (Best Practice):
① SMEDは他の証拠・宣言書から分けて提出すること
37 CFR 1.132上、一つの宣言書で複数の法定要件に関する拒絶に対応すること自体は可能、しかしUSPTOは、特許適格主題については独立した宣言書(SMED)にすることを推奨する。理由は、101条の適格性に関する客観的証拠を、実施可能要件、記述要件、新規性、非自明性などの論点と混在させないため。(本年4月のSMEDメモと同じ内容:筆者)
② できるだけ早期にSMEDを提出する
審査過程のできるだけ早い段階でSMEDを提出することが有利となり得る。
特に注目すべきは、第1回目のOAより前に提出することも例示されている。早期提出により、後期段階での時間的制限の問題(即ち、結局RCEをしないとSMEDは審査されない)を回避できるだけでなく、審査官が最初に101条適格性を評価するときからSMEDを考慮できる。(第1回目のOAの前にSMEDを提出するのは、審査官との論点がそもそも嚙み合わない可能性、本来は不要だったかもしれないSMEDを提出することで経過書類禁反言の材料を増やす、出願人自らが101条の適格性に疑義をきたす発明であることを自認していたことになる、および、弁護士費用増の観点でかなり非現実的であると考える:筆者)
③ 利害関係のない第三者の証拠を活用する
専門家意見の証明力を評価する際、審査官は、専門家が事件の結果について有する利害、反対証拠の強さ、意見を裏付ける事実的根拠の有無などを考慮する。したがって、出願人自身による宣言というだけで無視されるわけではないが利害関係のない者の証拠の方がより説得力を持ち得る。
メモが具体例として挙げるのは、出願時に当該技術分野で知られていた限界・課題を説明する業界記事などがある(客観的な証拠)。こうした資料を用いて、当業者であれば「明細書が技術的改善を開示しており、クレームがその改善を反映している」と認識したことを裏付ける、という使い方がある。
④ SMEDを提出する目的を具体的に特定する
単に「101条拒絶を覆すためのSMED」と全体的に主張するのではなく、特許適格性判断のどの論点を証拠によって立証しようとしているのかを明示することが重要。
メモ自身が挙げている具体例として、
Step 2A Prong Oneにおいて、特定のclaim limitation(s)が人間の精神内では実際上実行できない(cannot
be practically performed in the human mind)ことを立証するためのSMEDである。(これは将にその通りで2019年に当時の長官Iancu氏によって考案されたUSPTOの審査基準のSTEP2AのProng
ONE、Prong TWOなのか、それともSTEP2Bに対して主張しているのかを明確にすることは重要である:筆者)
⑤ Examiner Interviewを積極的に利用する
SMEDを提出して終わりではなく、審査官とのインタビューによって101条およびSMEDを巡る具体的論点について相互理解を深めることも推奨されている。
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2019年、当時の長官Iancu氏によって作成されたUSPTO審査における101条適格性判断基準
